マーケティング事業者の業務自動化ツール開発例

※実際の費用・期間・仕様は、ご利用人数、既存データの状態、外部システム連携の有無などにより個別に変動します。

ご依頼のきっかけ

本件は、少人数でコンサルティングサービスを提供する企業様において、毎月の顧客向けレポート作成業務が担当者の大きな負担になっていたことが発端でした。月末月初になると、担当者が複数の広告プラットフォームやアクセス解析ツールにログインし、CSVデータを手動でダウンロードしていました。その後、Excelのマクロを用いてグラフ化し、顧客ごとのPDFレポートに変換したうえで、1件ずつメールに添付して送信していました。

顧客数が20社を超えたころには、この手作業に丸3日以上を要するようになり、本来のコンサルティング業務を圧迫していました。また、データの貼り付けミスや宛先間違いのリスクも課題として顕在化していました。

ご提案やお見積もりのポイント

大掛かりな顧客管理システム(CRM)や独自ダッシュボードをゼロから構築するのではなく、「担当者1名が月に1回、ボタンを押すだけで処理を完結できる単一目的のツール」に絞り込むことをご提案しました。

約3週間での導入を実現するため、初期範囲では連携するSaaS、取得する指標、レポートのレイアウトをあらかじめ固定しました。顧客向けログイン画面、複雑な権限管理、データベース、過去レポートのシステム内保管、追加SaaSとの連携は含めていません。外部APIから取得したデータをその場で集計してレポート化し、PDFの生成とメール送信までを自動化する、状態を持たない構成を採用しています。

開始時点で既存のExcelレポート、指標の定義、連携先APIのテストアカウント、テスト送信先をご提供いただき、確認を短いサイクルで進めることを前提に、税別33万円・約3週間で提供できる規模に整理しました。既存のExcelデザインを完全に再現するのではなく、Webブラウザで安定して印刷できる固定のHTML/CSSレイアウトへ置き換えたことも、短納期とコスト圧縮につながっています。

技術構成の工夫
項目 採用した技術と理由
フロントエンド 担当者がPCで利用するシンプルな管理画面として、Vue.jsベースの軽量な構成で実装しました。
バックエンド・API Node.js環境のサーバーレス関数として、外部SaaS APIからのデータ取得、集計、PDF生成、メール送信を処理します。
データ管理 顧客ごとの設定情報やAPIキーは、データベースを新設せず、セキュアな環境変数と設定ファイルで管理しました。
品質保証 代表顧客のデータで連携テストとPDFの目視確認を先行し、確認済みの固定フォーマットを残りの対象へ展開しました。
機密性の高いデータをAIで扱う場合の選択肢

本事例の標準構成では、生成AIによるレポート分析や文章生成は含めていません。一方で、広告・アクセス解析データを外部AIサービスへ送信せずに、レポートの要約やコメント案の作成を社内で支援したい場合には、お客様のPC・サーバー上で動作するローカルLLMを活用したプライベートAI構成を別途検討できます。詳細はプライベートAI・ローカルLLM導入をご覧ください。

この構成では、対象データ、必要な回答速度、機器のCPU・GPU・メモリ、ネットワーク設定を確認したうえで、利用するモデルと構成を選定します。機器の増強やネットワーク制御、追加検証が必要になるため、上記の税別33万円・約3週間の標準範囲には含めず、要件に応じて個別にお見積もりします。

納品物と機能の規模感

納品物は、社内担当者向けのWebアプリ、顧客・連携先の設定方法をまとめた簡易設定マニュアル、API連携テスト結果一覧の3点です。

初期リリースでは、社内のレポート担当者が利用する最低限の管理画面、外部API連携、メール送信機能に限定しました。過去のレポート履歴をシステム内に保存する機能は持たせず、送信済みのレポートは担当者のメールボックス(BCC)に残る運用としました。

ワークフローと画面構成
利用者 主な操作 実際の運用イメージ
レポート担当者 対象月の指定、データ取得の実行、レポートのプレビュー確認、一括送信 月初に管理画面を開き、「前月」を指定して「レポート生成」を実行します。代表的なレポートをプレビューで確認し、問題がなければ「一括送信」を実行します。
システムで扱う主なデータ
データ種別 主な項目
顧客・設定情報 顧客名、送信先メールアドレス、連携先アカウントID(設定ファイルとして保持)
外部取得データ 月間のインプレッション数、クリック数、コンバージョン数、費用などの集計値
出力レポート 月次サマリー、主要指標の推移グラフ(HTML形式およびPDF形式)

進行スケジュールと納品までの流れ

本案件は、既存レポート、指標定義、APIテストアカウント、テスト送信先を開始時にご提供いただくことを前提に、約3週間で進行しました。第1週に対象範囲と代表レポートを確定し、後工程での手戻りを抑えることで、API連携・PDF生成・メール送信・本番確認を短期間で進めています。

フェーズ 時期 実施内容とクライアント様のご対応
Step 1:対象範囲の確定・既存レポート確認 第1週前半 連携先SaaS、取得指標、固定レイアウト、送信先を確定しました。お客様には既存Excel、指標定義、APIテストアカウントをご共有いただきました。
Step 2:代表レポートのプロトタイプ作成 第1週後半 実際のAPIから代表データを取得し、ブラウザ表示とPDF出力のプロトタイプを作成しました。レイアウトと計算結果をご確認いただきました。
Step 3:一括処理・メール送信の実装 第2週 設定済みの対象に対するデータ集計、PDF生成、メール一括送信を実装し、送信先ごとの内容とBCC運用を確認しました。
Step 4:テスト・設定調整 第3週前半 テスト環境で担当者様に操作いただき、代表的なデータ、PDF表示、メール文面、操作フローを確認しました。
Step 5:納品・本番稼働・お支払い 第3週後半 本番環境へデプロイし、設定マニュアルとテスト結果一覧をお渡しして納品完了としました。検収後に全額をご請求しました。
お支払い条件について

原則として、着手金などはいただいておりません。ご契約時の前払いはなく、すべての開発作業が完了し、クライアント様による検収が完了した後に全額をご請求しました。

プロジェクトの費用内訳

以下の金額には、初期範囲の要件整理、固定レイアウトによるレポート生成、外部SaaS API連携、PDF生成、メール送信、テスト、本番環境へのリリースまでが含まれています。データベースの構築、顧客向けログイン、複雑な権限管理、追加SaaS連携、プライベートAI・ローカルLLM環境の構築は含まれていません。

項目 税別費用 範囲
要件整理・進行管理 ¥40,000 既存レポート・指標・API仕様の確認、対象範囲と進行の整理
UI/UX画面設計 ¥20,000 担当者向け管理画面(1〜2画面)と固定レポートレイアウトの設計
フロントエンド開発 ¥60,000 レポートプレビュー画面および操作インターフェースの実装
バックエンド・API連携 ¥150,000 外部SaaSからのデータ取得、集計ロジック、PDF生成、メール送信処理
テスト・導入サポート ¥60,000 API連携テスト、本番環境設定、簡易設定マニュアル、テスト結果一覧の作成
合計 ¥330,000 税込 ¥363,000
運用開始後の月額費用の目安(補足)

本システムは、サーバーレス環境を利用し、データベースを持たない構成を採用しているため、運用中のランニングコストを低く抑えられます。初期開発費とは別に、本番稼働後に必要となる費用の目安は以下の通りです。

項目 税別月額の目安 費用の性質と主な内容
第三者クラウドサービス利用料(実費) ¥0〜¥3,000 サーバーレス関数の実行基盤およびメール送信サービス(SendGridなど)の利用料です。実行回数が少ない場合は無料枠に収まるか、少額の実費のみがクラウド事業者へ発生します。
最低限の保守・運用サポート ¥10,000〜¥15,000 外部APIの仕様変更確認、軽微なレイアウト調整、月1回程度の動作確認を含みます。大規模な改修や新しいSaaSの追加連携は別途お見積もりです。
月額合計の目安 ¥10,000〜¥18,000 上記を前提とした低コストな運用想定です。レポート送信件数や連携先の追加によって変動します。

担当者コメント

約3週間で導入できた理由は、最初に「何を自動化し、何を初期範囲から外すか」を明確にしたことにあります。今回の課題は、顧客ごとに異なる月次レポートを手作業で作成し、送信する負担を減らすことでした。そのため、立派なダッシュボードや顧客向けマイページを作るのではなく、固定された対象からデータを集め、PDFにしてメール送信する流れに徹しました。

既存のレポート様式とデータ定義、APIテスト環境を開始時にご用意いただくことで、確認を短いサイクルで回しながら、担当者様の月末月初の作業を数分のボタン操作へ短縮できました。初期費用を税別33万円に抑えつつ、宛先間違いやコピー&ペーストのミスを減らす仕組みを構築できた事例です。

将来的に、レポートの数値をもとにコメント案や次のアクション案をAIで作成したい場合には、クラウドAIとの連携だけでなく、業務データを外部へ送信しないプライベートAI・ローカルLLM導入も選択肢になります。データの性質、機器性能、ネットワーク要件に応じた別途設計が必要ですが、段階的な拡張としてご相談いただけます。

よくある追加開発の目安

運用が定着し、「顧客自身がいつでも最新のデータを見られるようにしたい」というご要望が出た場合は、顧客向けダッシュボード(マイページ)の追加開発が考えられます。この場合、顧客情報のデータベース化やセキュアなログイン機能が必要となるため、税別60万〜90万円、約1.5〜2か月程度の追加開発となるケースが一般的です。

まずは小さく確実な業務自動化から開始し、浮いた時間を本来のコンサルティング業務に充てながら、必要が生じたタイミングでシステムを拡張していくアプローチは、小規模な企業様にとって費用対効果の高い投資となります。